野口さんの誠実さ、緻密な設計・施工計画で満足いく建物ができました。

トクデン㈱ 代表取締役社長

北野 嘉秀 様

  • 生真面目さが報われた奇跡

  •  当社は1939年(昭和14年)、電気技術者である祖父の北野山人が大阪で「特殊電機研究所」として創設しました。専門は電磁誘導機器で、変圧器の原型のようなものからスタートしました。電磁誘導とは、磁界の変化で電位差ができ電流が流れる現象で、変圧器とは、電磁誘導によって電圧と電流の強さを変えるものです。祖父の知人に海軍少将の方がおられ、海軍のレーダーの電源に製品を採用していただくことができ、事業は順調に運んでいました。
  •  ところが、敗戦に向かい生活も窮するなか、大阪大空襲にもみまわれ、祖父は裸一貫で必死に逃げて、現在の京都・山科の地に移りました。生真面目な性格であったため、「日本中が困窮している時にお金を回収するのは忍びない」と、売掛金の回収はせず、債権もすべて放棄し、事業の再開はあきらめていました。すると突然、GHQ(連合国軍総司令部)から、どうやって調べられたのかわかりませんが「日本の旧海軍の債務を物資に代えて支払います」との連絡が入ったのです。製品の原材料となる物がトラック何台分も届けられました。このようなことがなければ、今のトクデンは存在しなかったでしょう。
  • 100年故障しない熱ロールをめざす

  •  現在は電磁誘導加熱(IH)の熱ロール「ジャケットロール」が主力製品です。これはロールの熱で対象物を熱処理する機械で、例えば紙おむつの不織布、電子材料や光学用途の機能性フィルムなどを作る工程で使われます。
 
  •  世の中にある熱ロールは、熱したオイルや温水を流し込むタイプが主流で、電磁誘導加熱の技術を用いるのは世界で当社だけでしょう。「電気の機械なので、いずれ壊れるのでは?」と心配されるお客様もいらっしゃいます。「機械寿命は20年〜30年なので、ご安心ください」と説明いたしますが、じつは当社のめざすところは、100年たっても故障しない熱ロールです。お客様に喜んでいただける製品は性能面だけでなく、メンテナンスの必要がほとんどない、機器として信頼性の高いものでなければいけません。
  •  100年故障させないためには、電磁誘導についての突き詰めがまだまだ足りていないと感じています。設計基準や設計理論から見直し、電磁誘導をわかったつもりになっていないか、原点に返って研究する。ここにトクデンの勝負がかかっています。電磁誘導は1800年代初頭に発見された現象ですが、まだまだわからないことが沢山あり、奥の深いものなのです。
  • 量の拡大よりも誠実な姿勢

  •  野口さんとのおつきあいは、六五年前に社員寮をお願いしたことから始まりました。2015年の事務所棟の改築、京都工場の新築は、生産を継続しながらの工事ということで、緻密に計画を立て、施工していただきました。野口さんの並々ならぬ努力に敬意を表します。
  •  私が野口さんから大きな影響を受けたのは、建物を実際に使われる一件一件のお客様を徹底して大切にされていることでした。当時、営業部長だった私は、標準採用での大量受注という安易な道に傾倒しかけており、野口さんにはたと気づかされ、方針を一転させたのです。
  •  一件一件のお客様のもとに足を運び、お客様のお話を聴いて学ばせていただく。この姿勢が製品の改善、技術開発につながるのです。
  •  野口さんのように当社も誠実で真摯な社員が育ち、社員全員が生き生きと仕事をする企業となるよう、今後も上司が一人ひとりと向き合い、尽力していきます。